東アジア有象無象会議2012　報告会ツアー in 九州

松本哉

香港で開催された東アジア有象無象サミットの報告会を開催！！
これ、今の時代に非常に重要。去年の福島原発大爆発によって、「世の中ってずっと安定しているかも」と言うのがまったくの幻想だったってことがついに判明。いつどうなるかわかったもんじゃない。原発事故の影響だって、今後どこまで広がるかは誰にもわからないので不安でしょうがないし、いまでもいい加減な原子力政策をやってる限り、今後もどんな恐ろしい事態が巻き起こるかわかったもんじゃない…。
これまで、日本でもいろんなところで「場所作り」が展開されてきているが、いくら最高の場所を作ったとしても、天変地異やらロクでもない奴ら（例：東電）による災害が一発起こったらすべてが台無しになりかねない。
そんないま、「移動」をセットにして考えて場所を作っていかないと、危なっかしくてしょうがないことをついに学んでしまった。…ってことで！　いろんなところでとんでもない場所を作ってる人たちと交流を深め、お互い知恵を絞り合うと同時に、行き来もできるようにしていくことは超重要！
そんなとき、ふと日本周辺も含めた地図を眺めてみると…。おいおい、九州って結構いい立地なんじゃないか？　韓国も目の前だし、中国も近い。沖縄、台湾方面もたくさんの島でつながってるし、その先には東南アジアが待っている。むしろ東京なんてかなり奥まった辺鄙なところなんじゃないか？　チキショー、ずるい！九州は東アジア圏への窓口。これからの時代、どう考えても重要になってくるに違いない。それに「来年の第２回東アジア有象無象サミットは九州がいいんじゃない？」と言う意見もあり、せっかくなので九州で場所作りをやってる人らとの交流もあわせ、九州報告ツアーをやるしかないでしょ。
しかも、今回の香港作戦でも、重要な役割をした江上くんという人物も、福岡の人。そんなわけで、九州ツアー開催！！

【東アジアの有象無象達は移動し続け、ＤＩＹ交易路を作り出す】

江上賢一郎

2011年3月の東日本大震災及び福島第一原子力発電所の爆発事故は、これまで「定住」を基礎としていた日本の社会システムと私たちの生活のあり方に根本的な疑問を投げかけることになりました。今回の福島原発事故のような大規模かつ長期に渡る危機が起きた場合、危険な場所から避難•移住し、新しい場所で生活を作り直したいという「移動」への願いが生存権の健全な表明であるのに対して、貨幣交換を原理とした賃労働、土地の私有制度を基礎とした資本と国家のシステムは、このような「移動」への願いを退け、人々を賃労働と借家、そして危機的状況の中に縛り続け、留まらせようとしています。

しかしながら、このような日本の現状の中で生まれた避難•移住の困難という実際の問題と同時に、「移動」に対する切実な欲求は、国家という人為的な境界線やこれまでの同一言語文化の領域を超えたところで、私たちがそこで新たに生きたいと願うもう一つの社会、つまり「革命後の世界」についてのイメージを想起させ、人々とそれを共有し、実践へと誘う力もまた内に秘めているのではないでしょうか？どのように国境を軽々と越え、移動しつつ、新たな人々と出会い、「革命後の世界」を共に作り上げる事ができるのか？

今年４月に香港で行われた「東アジア有象無象会議(East Asia Multitude Meeting)」は、香港、韓国、台湾、日本から芸術•社会運動を通じた場所作りをしているグループが一同に介して、「革命後の世界」について話し合ったDIY(Do It Yourself)国際会議です。香港のOccupy(オキュパイ）運動の中心地、HSBC銀行本店一階に陣取られたOccupy Centralに一同に会し、それぞれの地域ごとの文化•社会運動の実践についての実例や、その問題点を挙げ、場所作りに伴う共通の問題と、これからの東アジアの自律的な空間と人々の移動•交流のあり方について話あう試みでした。第一回目とあって、まだ十分にテーマに沿った内容を詰めて議論が進行できたわけではありませんが、それでも異なるアジアの諸地域から集まり、共に生活し、酒を飲み、話し合い、共に作業していく経験そのものが、「革命後の世界」をすでに予見するような出来事でした。

この経験を、より多くの人々と共有し、共に体験していくためにはどうすればよいか？来年度は、第２回目のEast Asia Multitude Meeting の九州での開催を予定しており、今後アジアとの窓口になるであろう九州の地で、海外から来た人たちと寝食を共にし、酒を酌み交わし、語り合い、共に働いていける機会と場所を作っていきたいと考えています。今回、東アジア会議の報告会のゲストとして、松本哉さん（素人の乱）をお招きします。東アジア会議のテーマである「革命後の世界」を呼びかけ、自治としてのまちづくりを東京•高円寺で実践している松本さんに、福島事故以降の日本での「場所作り」と「移動」をめぐる困難と可能性について話してもらうと同時に、報告会に参加してくれた方々と一緒に、東日本と九州、そして九州からアジアへ向かう新たな人間の交易路を一緒に作っていくためのアイデアや準備について話していきたいと考えています。

プロフィール

松本哉（素人の乱）
1974年、東京都世田谷区生まれ。94年法政大学入学後「法政の貧乏くささを守る会」結成；卒業と同時に「貧乏人大反乱集団」結成。貧乏人のための雑誌「貧乏人新聞」を創刊。05年、友人と共同で古着＆リサイクルの店「素人の乱」を高円寺に出店した。現在、素人の乱５号店長をつとめながら、さまざまなイベントやデモ活動を続けている。

江上賢一郎（IndependentResearcher/Photographer)
1980年福岡県生まれ。早稲田大学、ロンドン大学ゴールドスミス校　文化人類学修士課程修了。イギリス留学中より、アートとアクティヴィズム、贈与経済、オルタナティブな自律空間についてのリサーチと写真による記録を始める。2011年度から、東アジアのアクティヴィズムとアートの領域を横断するネットワーク作りを開始。2012年度は、香港での「East Asia Multitude Meeting」の企画の他、韓国、カンボジア、フィリピンでの路上空間のリサーチ/プロジェクトを展開予定。